2025/06/13 15:13
〜手びねりから金彩までの制作ストーリー〜

昨年からコツコツと進めてきた「NOGAMIの招き猫」づくり。ついに販売までたどり着きました!
このプロジェクトが始まったのは、一昨年。友人の「招き猫が欲しいな」の一言がきっかけでした。
そこから構想を練り、サンプル制作、型作り、絵付け…と、約1年半かけて、ひとつひとつ丁寧に形にしてきました。
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くねっとした鍵尻尾の招き猫。私らしい“かたち”を探して
まずは手びねりで、ひたすら「形」探しから。
シンプルだけど、少し“くねっ”とした動きがあって、厚みはぺたっと平ため、どこか愛嬌のあるNOGAMIらしい招き猫を目指して試行錯誤しました。
手の高さや左右の違いには意味があるそうですが、今回は「右手挙げ+基本の高さ」の招き猫らしい形をベースに。
そして、尻尾は私の愛猫・ギィちゃんと同じ、短くて丸みのある“鍵尻尾”にしました。
招き猫のルーツにも「ボンボン尻尾の猫がモデルになった」という説があるのだとか。
冬の寒い作業場で、何度も形を壊してはつくり直した日々は、私にとって“模索の冬”でした。
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白い空気のなかで、石膏型作り
形が定まったら、次は型の制作へ。石膏型をお願いしている型師さんの工房へお邪魔しました。真っ白な粉に包まれた空間は、空気まで白く感じるような不思議な世界。ここで、元になる「原型(凹型)」と「石膏の鋳込み型」がつくられます。
陶器は乾燥・焼成の過程で約1割縮むため、原型は少し大きめに。そしてこの原型が、完成後の姿を左右する大事なベースに。
原型の最後の調整は私がさせてもらいました。愛猫ギィちゃんの手を観察しながら、招き猫の手のフォルムを直接微調整。優しく手招きしてくれるような、まるい手に仕上げました。
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絵付の方向性を探る日々
原型をもとに鋳込み型を作っていただいているあいだ、私は「前掛け」のデザインと色柄の模索に入りました。
まずは実寸大のテストピースを作り、絵付けから釉薬、金彩までを3回に分けて焼成。窓辺に並べた試作たちを眺めながら、自分らしい表現を見つけていきました。「これも可愛いけど、NOGAMIっぽくはないかも…」「この金彩、ちょっと華やかすぎるかな?」と自問自答を繰り返し、少しずつ“しっくりくる表現”を探っていきました。
この試作期間があったからこそ、絵付けの方向性がしっかり定まりました。
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くねっとしたフォルムを抜く、鋳込み作業の現場へ
素地作りをお願いしている京陶さんの工場にも足を運び、鋳込みの現場を見学させてもらいました。
泥漿(でいしょう)と呼ばれる泥を型に注ぎ、数分置く。石膏が水分を吸って表面が固まる仕組みです。
私の好みで、少し厚めに仕上がるよう時間を長めに調整してもらっています。
小さな一体に見えて、実は使う石膏型はかなり大きくて複雑。力も手間もかかる作業に、ただただ感謝です。
型から取り出した素地は、乾燥段階に合わせて、バリなどの処理をし綺麗に整えてしっかり乾燥させてから素焼き(約800度)という流れです。
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一体ずつ絵付けし、金彩をのせて、ついに完成!
素焼きが終わると、NOGAMIの絵付けと釉薬かけの作業になります。
今回は“初回記念”として、いろんなバリエーションの子をつくると決めていたので、首輪や前掛けの柄・色を変えながら、一体一体に向き合うように作業を進めました。釉薬がけの工程もそれぞれ異なるため、たまに“釉かけ迷子”になることも。笑
本焼きは1250度。過去の苦い経験から・・・冷め割れ防止のため、3〜4日かけてじっくり温度を下げ、窯を開けるのは完全に常温になってからにしています。これがNOGAMIのルールです。笑
仕上げは金彩。濃い茶色の金液を丁寧に筆でのせ、800度で焼成。金液の焼く前の深いとろみのある茶色が絵付けされた陶器との色合いが私はとても好きで、これは作り手だけが見られる特権かもしれません。
焼成後、招き猫ちゃんたちはキラキラ輝きを身にまとい出てきました。
金彩のきらめきが加わることで、ぐっと引き締まり、ようやく完成の瞬間を迎えました。
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今回は、白猫・黒猫をベースに、首輪や前掛けの組み合わせを変えた38体の招き猫が誕生しました。
初回は特別に「いろんな子」をつくりましたが、今後は基本となる定番の子をメインに、時折、可愛い模様や特別な柄の子を“気まぐれ”で生み出していく予定です!!
ひとつずつしっかりと健康チェック(検品)をしてから、
6月14日(土)10:00〜6月16日(月)21:00 の間、NOGAMIのWebショップに並びます。(抽選式)
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この招き猫たちは、私にとって“猫という存在”そのものをかたちにしたようなものです。
おうちの猫ちゃんの兄弟のように。猫が好きだけど飼えない方のそばに。大切な猫を思いながら暮らす方のところに。
どこかで、そっと暮らしに馴染んでくれたら嬉しいな、と思っています。